ピエール・オテイザ
ピエール・オテイザ社 (Pierre Oteiza) の創立者である農家の息子、ピエール・オテイザは、300人程度の人口のフランスの小さな村、アルデュード村で生まれました。アルデュード村はピレネー山脈があるバスク地方の中心地であるバイヨンヌから50kmほどの距離であり、ピエールはそこで酪農家と肉加工の職人として経験を積みました。
ピエールは若いころからパリで叔父と共に肉屋としての美学を学びました。そのあと故郷のアルデュード村に戻り、1975年に家族経営の農場を管理するため、妻のキャサリンと一緒に、“Gastronomie de la Vallée des Aldudes” という組織を作りました。そこでは地元のブリーダーや養豚家、チーズ職人とと協力して、地元の食材のプロモーションを始めました。
1988年にパリで行われたイベントで彼の商品をプロモーションしているとき、ピエール・オテイザは絶滅の危機に瀕していた希少なバスク豚の “ピ・ノアール " (Pie Noir)を発見しました。ピ・ノアールは樫の木の実を主食にしていましたが、20世紀前半の森林伐採や数十年にわたる集約農業により樫の実は激減し、ピ・ノアールは絶滅寸前でした。ピエール・オテイザは30頭ほど残っていたピ・ノアール豚のうち2頭を譲り受け、この豚を絶滅から救うことを誓ったのです。
他の地元のブリーダーの支援を受けて、彼はアルデュード渓谷の"ピ・ノワール"バスク豚を徐々に復活させることができました。これにより、90年代には地元の生産者が協力して、ピエール・オテイザブランドとして新たなレンジの新鮮な肉やハム製品を作り出すことに成功しました。
それ以来、会社は少しずつ大きくなり、2016年には多くの努力と投資のかいあって、フランスではとても名のあるAOPラベル(フランス製品のとても高品質な商品を保証する品質保証ラベル)をバスク豚の生肉部門で獲得しました。また2019年にはハムの部門でも"キントア豚"をいうブランド名のもとにラベルを獲得しました。
ピ・ノアール豚たちは森の中や山原を自由に歩き回っています。お散歩を終えると屋根にシダの生えた小屋に戻り、ハーブや栗やドングリ、ブナなどの季節の木の実を食べます。(主に9月から初雪まで。)また、ブリーダーたちは栄養バランスを整えるために、遺伝子組み換え食品を含まない穀物を毎日与えます。
アルデュード渓谷のハムは、バスクのバッサン・ドゥ・ラドゥール(Bassin de l’Adour )の塩で塩漬けされ、自然乾燥小屋で10-14か月熟成されます。一方キントアハムは16-18か月熟成され、強いフルーティな香りでしっかりした食感の濃い赤の霜降りのハムに仕上がります。
現在では、キントア豚のハムはフランスのバスク地方を超えて他の地方でも広く、目の肥えたフランスのグルメ通たちの舌を満足させています。パリのイベントで絶滅寸前の希少な豚の品種を発見してから32年後には、バスク地方に8店舗、パリに2店舗の店を構えるようになりました。ピエールオテイザの商品は地中海沿岸やロワール地方のも進出し、さらには海外中の国々の肉屋や高級食材店で重宝されるようになりました。